事例集

具体的な解決事例

相続登記を長い間やっていると出会う珍しい事例、または件数の多い代表的な事例を、いくつか紹介いたします。

事例-1 父親が亡くなった後、登記をせずに放置していたら母親が亡くなった場合

父親が随分前に亡くなったのだが、相続税の支払いが発生しなかったので、名義変更をしないで放置しておいた。そうしたら、しばらくしたら母親も亡くなってしまい、さすがに名義変更をした方が良いかなと思って司法書士に相談に行った。

司法書士からのコメント
相続登記は、相続税の申告のような期限がありませんので、まれにこのようなことが起こります。今回の場合、法律上は、父と母で2回相続が発生したことになりますので、本来であれば、父親の相続登記をした後で、母親の相続登記をすることになるのですが、遺産分割協議書を工夫することで、1回の相続登記で済ませることが出来ます。1回で済ませれば、何より登録免許税が安くなるのが大きなメリットです。ただし必要書類として、父親と母親両方の出生から死亡までの戸籍が必要になりますので結構大変です。このケースでは、上記の方法で無事1回で相続登記が完了しました。
ただし、この方法には、いくつか条件があります。いつも必ず出来る訳ではないので放置するのはリスクがあります。基本的には最初の相続が発生した時点で相続登記をしておきましょう。

事例-2 不動産と借金の両方を相続人の一人が相続する場合

父親が亡くなり、母親と子供3人の相続で、父親に借金があった。不動産には母親と長男が住んでいて、他の子供は家を出ていたので、長男が不動産を相続し、借金も引き受けることになった。

司法書士からのコメント
ここで注意して頂きたいのは、「借金は遺産分割協議では変更できない」という事実です。「長男が不動産を取得するなら当然に借金も負担して欲しい」と考える相続人が多いと思いますが、これはあくまで家族間での理屈で、お金を貸している金融機関には効果が及びません。遺産分割協議書を作って安心していたら、後から長男の支払いが滞った場合、他の子供二人に請求が行くことは充分に考えられます(実際に、請求されて大きなトラブルになることも多いのです)。
この時問題になるのは、「不動産に関しては遺産分割協議書は有効なので長男のもの」という点です。ようするに長男に関しては「権利はあるけど義務が果たせない」という状態になってしまうのです。
このトラブルを防ぐには、相続登記の時に、不動産を相続しない相続人(今回の場合は、母と子供二人)は全て相続放棄の手続をしておくことです。こうしておけば、後で借金の請求をされる心配はありません。
亡くなった方に借金がある場合でも、上記のようなアドバイスをしない事務所もあると聞きます。相談に行くときは充分注意しましょう。

事例-3 父と母の共有マンションで、事例1と同様のことが起こった場合

父と母の共有になっているマンションで、父が亡くなった後、相続登記をせずに放置していて、その後、母が亡くなった段階で相談に来られた。

司法書士からのコメント
事例1のケースと似ていますが、今回は不動産が父と母の共有になっています。この場合、父が亡くなった時点では、父の共有持分だけが相続されます。従って、通常のやり方だと、父の共有持分で2回の登記、母の共有持分で1回の登記が必要になりますが、遺産分割協議書を工夫することによって、父の共有持分の登記を1回で済ませることが可能となります。
従って、3回必要だったところを2回の相続登記で済ませました。

事例-4 子供二人で、障害者の兄が管轄の異なる不動産を全て相続する場合

母は先に亡くなっていて、今回、父が亡くなった。相続人は子供二人で、そのうち障害者である兄が不動産を相続した。

司法書士からのコメント
相続人は兄と妹で、兄には障害があります。妹の希望で遺産分割ではなく妹が相続放棄をすることになり、放棄の手続が終わった後、兄の単独所有の相続登記をしました。兄が各種の手続をするのが困難で、妹は遠方に住んでいた為、その後、預貯金や有価証券やゴルフ会員権の相続手続も全て引き受けました。
不動産は自宅の土地建物と、少し遠方の農地があり、法務局の管轄が異なる為、2ヶ所での申請となりました。
また、相続税の基礎控除を超えていた為、相続税の申告が必要となり、相続税に強い税理士を紹介しました。

事例-5 夫が亡くなり、3人の相続人のうち妻が不動産を相続した場合

相続人は妻と子供2人で、特に揉めることも無く遺産分割協議がまとまり、妻が不動産を相続した。

司法書士からのコメント
典型的な事例です。二人の子供が同意しているのでスムーズに運びました。
唯一、特徴のある点と言えば、夫の出生まで戸籍を遡ったところ、1歳まで名古屋市で取得出来ましたが、0歳から1歳までは遠方の役所で取得する必要がありました。
しかし、相続登記の場合、原則は出生から死亡までの戸籍が必要ですが、生殖年齢に達していない場合は添付しなくても許されます。1歳ならば間違いありませんので取得しないで申請し、問題なく法務局の審査は通りました。

事例-6 夫が亡くなった後、遺言により妻が相続した場合

法定相続人は妻と兄弟姉妹5人で、妻に相続させるという遺言が見つかった。

司法書士からのコメント
貸金庫から自筆証書遺言が見つかり、それを持って妻が相談に来られました。封が空いていたので使えるかどうか自信が無かったようです。遺言としては有効なので、遺言どおりに相続手続を進めました。
ただし、自筆証書遺言なので家庭裁判所への遺言の検認が必要です。今回のケースでは兄弟姉妹が法定相続人で人数も多かったので、検認に必要な戸籍の取得に大変な時間と労力がかかりました。
検認が無事に済んだあとは妻への単独相続なのでスムーズに進めることが出来ました。
今回の場合、もし遺言が公正証書だったら家裁の検認が不要になりますので、費用も安くなったし、時間も早かったでしょう。つくづく遺言を書くなら公正証書に限ると思いました。

事例-7 父が亡くなり、母と子供二人の相続人のうち長男が相続した場合

法定相続人は3人で、特に揉めることも無く遺産分割協議がまとまり、長男が不動産を相続した

司法書士からのコメント
典型的な事例です。
法定相続人全員が親の家に住んでいたので、話し合いもまとまり易く、非常にスムーズに進みました。
唯一特徴のある点と言えば、未登記の物置が固定資産税の明細に記載されていたことです。
未登記建物の相続登記をする場合、土地家屋調査士に測量を頼んで表示登記を入れてからでないと相続登記が出来ません。費用も時間も余分にかかります。物置や車庫の為にそこまでしたくない、と考える人も多いので、未登記のままにしてある場合も珍しくありません。
この場合、問題になるのは固定資産税の名義です。役所で母屋の名義と一体になる処理がされている場合は、母屋の相続登記をすれば物置や車庫の名義も変わります。しかし、一体となる処理がされていない物件もたまにあるので、その場合は固定資産税の名義変更の申請を役所でする必要があります。
今回の場合は一体となっていましたので、固定資産税の名義変更は不要でした。

事例-8 店舗兼自宅の相続の場合

法定相続人は3人で、特に揉めることも無く遺産分割協議がまとまり、妻が不動産を相続した。店舗兼自宅だったので、特殊な登記がされていた。

司法書士からのコメント
奥様からの依頼で、子供二人との遺産分割協議で、自分が不動産を相続すると決まったので、協議書を作成して相続登記をして欲しいという内容でした。
めぼしい預貯金や有価証券は無かったので、遺産分割協議書には不動産のみを記載しました。
ただ、相続する不動産が店舗兼自宅だった為、少し特殊な登記がされていました。長屋風の他の店舗とつながった建物で、真ん中の部分が被相続人の所有になっていました。
こういう場合、土地は他の店舗の主と共有になっていることが多いのですが、今回の場合は、1棟に3店舗入っていて、土地もきれいにそれぞれの店舗の下の部分が3分割されていました。ようするに3つの土地の上に1棟の建物が建っている状態でした。結果的に土地に関しては通常の1戸建ての登記に近いと言えます。
ただ、建物は1棟を3人が分割して所有している状態なので、マンションと同じような区分建物の登記がされていました。
従って、建物は区分建物の相続、土地は単有の相続ということになりました。

事例-9 借地上の建物の相続登記をした後、すぐに親戚に生前贈与をした場合

名古屋市の方が相続人で、相続不動産は岐阜県。借地上の建物で父と母の共有名義になっていて、母が先に亡くなっていたが相続登記をせずに放置していた。今回、父が亡くなって相談に来られた(この部分に関しては事例3と同様のケース)。
今回の場合、相続登記をした後、すぐに姪に生前贈与を希望(既に姪が当該不動産に住んでいたため)。

司法書士からのコメント
借地上の建物と言うことで、一部、注意点がありましたので、ていねいに説明しました。
具体的には、借地上の建物の所有者が変わる場合、相続が原因の時は何も問題ありませんが、贈与や売買が原因の時は必ず地主の承諾が必要になるからです。幸い地主さんとの関係は良好で問題なく承諾されました。
母の相続登記が放置されていた件に関しては、事例3と同様の方法で通常3回の登記手続を2回に短縮して手続をしました。この点は非常に感謝されました。
あと、この事例ではちょっとあわてることがありました。
相続登記が済んだあと生前贈与の手続を進める前の段階で、依頼人(不動産の相続人)が抗がん剤治療で入院してしまったのです。電話で奥様から事情を聞いて、すぐに次の日に病院に行って生前贈与の書類に署名押印を頂きました。幸い病状は安定していて意思疎通もはっきりしていましたので、無事に依頼どおりの登記を完了することができました。

事例-10 遺産分割調停の後、調停調書によって相続登記をした場合

夫が亡くなった事例で、妻と息子二人で遺産分割調停をした後、自宅は妻が相続すると決まった調停調書により相続登記をするケース。

司法書士からのコメント
調停の内容は、妻(依頼人)が自宅を相続する代わりに金銭を息子二人に支払うというもので、いわゆる代償分割と呼ばれるものです。不動産以外にめぼしい財産が無い場合に良く行われる分割方法です。
ただ高齢の配偶者が老後の蓄えを減らすことになるので、不安な場合は夫または妻の生前に遺言を書いてもらった方が良いでしょう。子ども二人には遺留分がありますが、それでも遺言があれば代償分割で支払う金銭を減らすことは出来ます。(最近、相続法の改正案が国会を通過して配偶者居住権が新たに認められることになりました。その場合、遺言などで指定しておくことが条件になるようです。そうなると、今まで以上に遺言の重要性が増すことになるでしょう)
次に登記についてですが、遺産分割調停後の調停調書による相続登記は通常の場合と異なる部分がありますので注意が必要です。ただし、調停調書は裁判所の発行する書面なので信用度が高く、申請した後の審査は通常よりも早い傾向があります(申請書類に間違いが無いことが前提ですが)。
今回も法務局の審査はかなり早く、登記識別情報(昔の権利証です)も早く届きました。依頼人には、とても満足して頂きました。

事例-11 遺言どおりに分割しようと思ったら、遺言で指定されていなかった相続人から遺留分を請求された場合

父親が亡くなって相続人は子ども三人。長男が愛知県、次男が東京、三男が静岡県と離れている。遺言では長男と三男のみが指定されていて、父親とケンカ別れをした次男は指定されていなかった。
自筆証書遺言だったので家庭裁判所の検認の時に次男が遺言の内容を知って、しばらくしたら弁護士に依頼して遺留分の請求をしてきた。
長男と三男は遺留分請求自体は覚悟していて、請求されたら支払う予定だった。

司法書士からのコメント
遺留分請求自体は納得されていたので揉めることは無かったのですが、三男が不動産を生前に贈与されていたため、その分を特別受益とみなされて、いくらで評価するかで少し時間がかかりました。(三男は、その物件に住んでいたため売ることは出来なかった)
一方、相続開始時の父親所有の不動産は千葉県にあったのですが空き家になっていたため売却してから分割することになりました(専門用語で換価分割と言います)。この場合、一旦、一人の名義にしてから売却した方がスムーズに進むので、そのように遺産分割協議書を工夫して長男・次男・三男に署名押印してもらいました。
最初はシンプルな遺言による相続登記の相談でしたが、結果的に複雑なご依頼になりました。しかしその分、終了した時には大変に感謝されました。

事例-12 名古屋在住の相続人が東京の不動産を相続した場合

東京在住の母親が亡くなって、居住していた東京の不動産を名古屋の子が相続したケース。
最初は親戚のおじさんが相談に来て、後から相続人が事務所に来た。東京の不動産でも依頼できるか心配だったようだが、問題なく引きうけた。
また、東京の不動産を今後利用する予定は無いので、相続登記終了後は売却して換金することを希望していて、「売却も頼めるか」、と聞かれたので、こちらも問題なく引きうけた。

司法書士からのコメント
法定相続人は当初、子が一人のみということでした。ところが戸籍を調べた結果、母親が初婚だと思っていたところ、かなり若い頃に一度結婚していて1年たらずですぐに離婚していたことが分かりました(親戚も含めて誰も知らなかった)。相続の仕事を長くやっていると、このような事例にたまに当たることがあります。
しかし、この事例はラッキーでした。初婚の時に子がいなかったからです。前に似たような事例で子がいたことがあり、弁護士を巻き込んだ激しい争いになったことがあったので、子がいないことが分かった時はほっとしました。
その後の手続は順調に進み、相続登記終了後、提携している不動産業者に東京に行ってもらい査定書を作らせました(大手の不動産業者で東京にもいくつか支店があります)。査定書を依頼人に見せて、しばらく検討してもらったところ、OKが出て売却手続に入りました。

事例-13 元からあった共有持分の住所が変更になっていた場合

母が亡くなり相続登記の相談を受けたケース。相続人は長男一人。不動産が4つあり、最新の登記事項証明書を調べたところ、建物の一つの10分の1を元から相続人が共有持分として持っていたことが分かった(相続人は認識していなかった)。
ところが10分の1の共有持分の住所が現在と違っていたため、相続登記の前に住所変更登記が必要になるケースであった(住所が一致していないと同一人物とみなされないため)。

司法書士からのコメント
この事件では非常に珍しい事が起こりました。
住所変更登記と相続登記を連件申請で出して法務局から完了通知を受け取った後で、登記事項証明書で確認したところ、何と法務局がミスをしていることが発覚しました。相続人の記載が本来「所有者」であるところ「共有者」となっていたのです。(暑い日が続いたので法務局の役人も集中力を欠いたのでしょうか)
急いで法務局に連絡して間違いを指摘したところ、いつものお役所対応とは打って変わって、非常にていねいに謝罪してきて、「すぐに訂正して無料で登記事項証明書を送ります」と言われました。普段から、このくらい親切だと、ありがたいのにと、つい思ってしまいます。
事情を依頼人に説明したところ、「自分達では絶対にミスに気付かなった。頼んで良かった」と喜んでもらえました。

事例-14 区画整理で土地の表示が変わっていた場合

父が亡くなり母と子の遺産分割協議が必要な相談。子が全て相続するということで母が同意していたので、その点は問題ないケース。
ただ、持参された権利証(登記済証)に記載された土地の表示と、固定資産評価証明書の表示が違っていた。

司法書士からのコメント
早速、登記事項証明書等の書類を取得して調べたところ、土地区画整理があって表示が変わっていたことが分かりました(専門用語で換地処分と言います)。結局、依頼人の認識と実際の土地は一致していたので問題はありませんでした。
遺産分割協議もスムーズに進み、無事に相続登記が完了しました。

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