Q&A

残業代請求の事例

当事務所で実際に扱った代表的な事例、ちょっと珍しい事例などを紹介します。

事例-1
依頼人の事前予想よりも大幅に増額して満額回収に成功したケース

50代男性 中堅製造業
未払い残業代 135万円

相談に来られた時は会社を辞めた直後で次の就職先を探されている状況でした。前の会社を辞めた理由を聞くと、人手不足なのに若手が全然定着せず、残業が増えていく一方で、会社が一定額の残業代しか支払わない状況が長く続いたことと、外国人の雇用も増えてきて、指導する立場だったので、コミュニケーションが取りづらく、ストレスがたまっていったこと、を上げられていました。

タイムカードはありませんでしたが、その代わりに上司のサインが入った日報があり、それで出退勤時刻の把握は出来ました。上司のサインがあるので証拠能力も充分です。

依頼人は相談に来る前に自分で残業代を計算していて、計算表を持参してきました。それを見ると、50万円くらいの金額になっていました。計算の根拠を聞くと、「会社が出している計算方法に従って自分で計算した」、ということでした。

一般的に、会社は残業代を増やしたくないので、法律通りの計算方法を発表していない場合が多いのです。実際に労働基準法に従って専門家が計算すると、たいていは増額になります。この事例の場合もそうでした。しかも、本人計算の倍以上という大幅な増額でした。結果を報告すると依頼人は非常に驚いていました。

また、この事例の場合、ラッキーなこともありました。たまたま前年に会社に対して労働基準監督署の臨検が入っていたのです。その際に、残業代が適切に支払われていないことで指摘を受けていたようでした。それで会社も残業代に関して敏感になっていたようです。

私は、「この情報を利用しない手は無いな」と思い、会社に対して送る催告書に「支払いが無ければ、労働基準監督署に再度の臨検の要請をする」と書きました。この一筆が効いたのかどうかは分かりませんが、1週間ほどしたら、指定した口座に請求金額が満額振り込まれていて、裁判をすることもなく解決しました。

依頼人には非常に喜んで頂き、私が手掛けた残業代請求の中でも、特に成功した事例で印象に残っています。

この事例から分かる注意して頂きたいポイント

よく残業代を自分で請求して満額回収したと自慢げに語っているコメントをインターネットで見かけますが、実はこれは会社に騙されている可能性が大きいです。会社は低めに計算した残業代を本人に提示して、「今、受け取れば、満額支払います。」と言って終わらせようとします。それで、満額回収したと勘違いしている人が多いのです。実際には、専門家が計算すると増額するケースがほとんどなのです。これから残業代を請求しようとしている人には覚えておいて頂きたいポイントです。

事例-2
法的な主張に聞く耳を持たず、自己都合だけを言ってくる小規模会社の社長のケース

20代男性 小規模メーカー
未払い残業代 約40万円

従業員が10人未満の小規模な会社で、タイムカードも機械式では無く手書きで毎日記入するタイプでした。本人は、過去2年分のタイムカードを全て保管していたので、推定計算をする必要はありませんでした。

ただ、小規模な会社にありがちな、労働基準法に従ったルールが未整備で、正直、いい加減に運営されていました。こういうタイプの会社は、いざ争いになった時に、法律による合理的な説得が通じないことが多々あります。ようは、「今まで当然のようにやってきたことだから何が悪い」という態度です。この会社も例外ではありませんでした。

まず内容証明で請求しましたが、通常なら、例え強引であっても一応は法律に基づいた反論が返ってくるものですが、ここの場合は、「早朝出勤は確かにあったが、そんなものはどこでもやってる、だから残業ではない」とか、「残業代は、賞与に含めて支払っているから、未払いは無い」とか、「就業規則に書いていないけど、みなし残業代は認められる」とか、もう法的には無茶苦茶な反論が返送されてきました。正直、先が思いやられるなと感じました。

このケースでは、タイムカードが全てそろっていたので、労働審判ではなく民事訴訟を選択しました。民事訴訟は労働審判のように3回以内という制限が無いので、長引く可能性がありますが、一方で、話し合いが前提の労働審判と違って、例え和解になっても解決金の割合が高い傾向があります。

民事訴訟を提起して、相手方から答弁書が送られてきました。見ると、内容証明の後の反論書とたいして変わらない内容だったので、「まあ、これなら裁判では通用しないだろうから有利に進むだろう」と思いました。ただ、唯一気になる点は、小規模会社の社長にたまにあるのですが、どれだけ不利になろうが、どれだけ長引こうが、絶対に自分の主張を引っ込めずに、しつこく争ってくる場合があることです。(なまじ法律の知識が無いだけに、合理的に不利だという判断が出来ないのでしょう)。

今回の場合は、幸いなことに、相手は初回から金額交渉のテーブルにつきました。内容証明の段階では1円も払おうとしなかった訳ですから、大進歩でしょう。裁判所も「法的には労働者側の主張の方が筋が通っている」というスタンスで社長に説明していたのが大きかったのでしょう。それでも、最初に社長がしぶしぶ提示した金額は低かったので、こちらは「その金額では合意できません」と裁判官に伝えました。

最終的には、2週間以内という早期の支払いを条件にして合意できる金額で決着しました。それにしても、金額交渉する気があるのなら、内容証明の段階で連絡して欲しいものです。通常は、内容証明の後に金額交渉が無い会社は、裁判になっても強硬姿勢を貫いてくる場合が多いのです。私は長引く覚悟をしていましたので、正直、拍子抜けした部分もあります。

結果的には満足のいく決着となりました。民事訴訟で解決した事例です。

事例-3
タイムカードも昼休憩も無かったブラックIT企業のケース

20代女性 中堅IT企業
未払い残業代 約100万円

労働審判になった事例です。

私が受けた依頼の中でも、会社の悪質度がかなり高いと思われたので印象に残っています。

まず、この会社は当初タイムカードを備えていませんでした。それに類するものも全くありません。ようするに、従業員の時間管理をする体制を全く整えていなかったのです(驚いたことに、これでも全国に支店がある会社なのです)。まさに、あきれるようなひどい会社です。(途中から、タイムカードを導入しました。きっと、今回のように従業員の誰かが訴えたのではないかと推測します。そんなことでもなければ、改善されないような会社だということです)

他にも、この会社では、昼の休憩がありませんでした。もちろん名目上の昼休憩は存在していましたが、実際には、電話対応や会議などで休むことが出来ない体制だったのです。依頼人は、弁当持ち込みで食べながら電話対応をしたり、ひどい時には昼食抜きで働く時もあったようです。

また、基本給を抑えて手当を多めに出して給料を支払っており、いざ裁判となったら、手当は「みなし残業代」だと主張してきて、だから残業代は支払済みだから支払わないと言ってきたのです。最初から、残業代請求を見越して、なるべく残業代が安くなるように設定しているとしか思えない対応です。

更に、強制退社時間というものを設けていて(当然、定時よりも2時間ほど遅い)、会社幹部が「強制退社時間までは残業じゃない」などと発言していたりと、コンプライアンスの欠片もない驚くほど悪質な会社でした。

当然、こんな会社ですから、内容証明で支払ってくるはずもなく、予想どおり裁判になり、労働審判の申立をしました。

依頼人が会社の労働環境を良く記憶していたこともあり、詳しい陳述書を証拠に出して、タイムカードが無かった部分の計算の根拠としました。(申立人の記憶を頼りに、会社の労働環境を記述したものを陳述書と言います)

労働審判の特徴として、3回以内で終了するというものがありますが、実際には、ほとんどの労働審判が初回で決着しています。裁判所も出来るだけ初回で、交渉をまとめようとしてきます。(裁判官や審判委員の態度を見ていれば分かります。これは私の想像ですが、恐らく、初回でまとめた方が彼らの人事評価が上がるのではないかと推測しています)

内容証明を送っても「1円も支払わない」と言っている会社から回収するのは、裁判に訴えるしかありません。でも、出来れば早めに解決して欲しいと思っている人も多いのが実情ですから、その為には、労働審判は有効な選択肢だと思います。

ただ、少ない回数で決着する分、通常の訴訟よりも1回の時間が長いという欠点もあります。初回だと、だいたい3時間くらいはかかるのが普通です。

何故、そんなにかかるのかと言うと、まず、一通り双方の主張の確認をするのに約1時間、その後は、申立人と相手方で交互に審判室に呼び出されて金額の話になります。裁判官と審判委員が入れ替わりに入ってくる申立人と相手方に対して、金額交渉の仲介をするというスタイルです。これが、すんなり終われば3時間もかからないのですが、たいていは、何度も何度も審判室を往復することになります。

今回は、相手方に弁護士がつき、当初、「もし、支払うとしても20万円」と主張していました。そこから、何度も入れ替わりの交渉になり、最終的に100万円で決着しました。正直、もっと上積みしたいのが本音でした。しかし、相手方が「今、経営が苦しいので、すぐには支払えない。3カ月先になる。」と言ってきたので、依頼人が、「それなら100万円でいいから、もっと早く支払って欲しい」と主張して、2ヶ月先まで短縮させました。それでも、通常は2週間以内に支払ってくる会社がほとんどなので、最後の最後まで困った会社でした。

事例-4
早朝・夜勤が当たり前のブラック運送会社のケース

40代男性 中堅運送会社
未払い残業代 約170万円

依頼人はトラックの配送業をしていて、何と出勤時刻は深夜の3時から4時という、きつい職場環境でした。たまにではなく、ほぼ毎日が上記の時刻に出勤なのです。

深夜労働が当たり前なので、当然、残業代は相当な額になります。しかし、会社側は、少しでも残業代を減らそうと、タイムカードを出勤した時には打刻させず、朝の5時から打刻を許していました。従って、タイムカード上は朝5時出勤となってしまいます。

ところが、依頼人は独自に対策を取っていて、毎回、出勤と退勤の時にスマホに時刻を記録していたのです。客観性に欠けるので証拠としては弱いですが、それでも何も無いよりは、はるかにマシです。陳述書と組み合わせれば充分な証拠になると考え、依頼を引き受けました。タイムカードを偽装していた会社のやり方も許せないという気持ちもありました。

まずは催告書を郵送して請求しましたが、タイムカードを偽装するような会社ですから、回答も予想通り、「スマホの記録など証拠にならない。」、「早朝出勤は、もししていたとしても、本人の仕事が遅いから勝手に出てきただけで、会社の指示ではない」などの大反論をしてきて、結果、「未払い残業代など無い。1円も払うつもりは無い」という強硬なものでした。

早速、裁判手続の準備に入りました。金額が高額だったのと、証拠が強いとは言えなかったことで、労働審判を選択しました。労働審判なら、証拠が弱くても、裁判官を介した話し合いで妥協点を探れます。あと、3回以内で終了しますので、長引く恐れもありません。

裁判所に出す陳述書は詳しければ詳しいほど証拠として強くなりますので、何回か書き直してもらいました(実は裁判所が陳述書の評価を上げるポイントが、いくつかあるので、それを指摘して書いてもらいました)。

労働審判は初回から白熱しました。お互いが主張を出し合って何と3時間ほどかかりました。労働審判は回数が3回以内と制限されている分、1回の時間が長い傾向があります。裁判所も3回を使い切るという発想ではなく、なるべく少ない回数で、出来れば初回で終わらせようとしてきます。

証拠が弱い分、ある程度の減額は仕方がありません。こちら側も減額されるのを見込んで、請求しています。そもそも裁判になる前は、「1円も支払わない」と言っていた会社ですから、減額になっても回収できれば大成功です。

最終的に裁判官が提示した金額が170万円でした。会社は当初、渋っていたようですが(後半になると、交互に部屋に入って裁判官と話をするので、相手がどのような様子なのかは分からない)、最後は会社側の担当者が裁判官に説得されて決着しました。時間が長いので、初回は大変ですが、何回も裁判所に通うことを考えたら、1回で決着が付くのはメリットだと思います。

和解条項には、会社側の希望で「今回の残業代請求については他言しない」という条項が追加されました。実は、この条項は、残業代請求では良く利用されるもので、残業代請求が他の従業員に波及するのを防ぎたいという、会社側の意向が働いています。しかし、依頼人にとってはマイナスになる条項ではないので、通常は反対はしません。下手に反対して、せっかく整った和解案が振り出しに戻る方がマイナスが大きいと考えるからです。

和解調書が届いてから3日ほど過ぎたら、無事、依頼人の口座に和解金が振り込まれました。時間はかかりましたが、当初は「支払わない」と会社が言っていた訳ですから、成功と言えます。依頼人にも満足して頂けました。

事例-5
タイムカードが無く業務日報で請求したケース

20代男性 小規模サービス業
未払い残業代 約60万円

若い依頼人で、労働環境がハードだったので、勤めて2年以内で辞めています。タイムカードが無く、業務日報を大量に持ってきたのが印象に残っています。

業務日報には退勤時刻が書いてあり、毎回、上司が判を押す形になっていましたので、退勤時刻の証明としては充分でした。ただ出勤時刻を証明するものは何もありませんでした。

出勤時刻は定時の会社なら、それでも構わなかったのですが、残念ながらこの会社の場合、早出残業も常態化しており、定時が8時半のところ、毎日7時半出勤が当たり前だったようです。

いざ裁判になった場合、陳述書を書いてもらい、出勤時刻の証拠にしようと考えていました。陳述書とは、本人に出来るだけ詳しく具体的に、平均的な1日の仕事の流れなどを書いてもらう書類のことです。(詳しければ詳しいほど、裁判における証拠能力が高まります)

残業代の計算は、7時半出勤で全て計算しました。結果、約60万円の残業代となりましたので、催告書を作成して会社に郵送しました。

出勤時刻の証拠が弱かったので、争ってくるかなと思っていましたが、しばらく後に会社から電話があり、「和解したい」と言ってきました。

和解金額を依頼人に連絡すると、OKだったので、すぐに会社に連絡して和解成立となりました。依頼人も、タイムカードが無く業務日報だけだったので、裁判になる前に和解が出来るとは思っていなかったようで、喜んでいました。

タイムカードがそろっていなくても、スピード解決した良い例だと思います。

事例-6
内容はブラックだけど、支払いは早かったケース

40代男性 中堅設備設置会社
未払い残業代 約25万円

勤め先は、小売店の設備を設置する企業で、結構ハードな職場でした。設備設置の時は泊まり込みになることも多く、当然、深夜労働になります。その割には残業代が少ないと思われたかもしれませんが、理由があります。

一つは、残業代が全く支払われなかった訳ではないこと。さすがに、これだけの仕事をさせて残業代が0円ということはなく、毎月数万円は支払われていました。(もちろん足りませんが)

もう一つは、あまりのハードな労働環境に耐えられず、依頼人が早くに辞めてしまったことです。正味8カ月くらいの労働期間で、そのうち、最初の3カ月は試用期間でした。

期間が短いこともあって、タイムカードが全てそろっていました。証拠に関して特に問題ありません。(泊りの時はタイムカードに時刻の記載はありません。当然、通しで働いているとして計算しました)
典型的なブラック企業だなと思って、「長引くかもしれないな」と考えましたが、実際には、催告書を郵送したら10日ほどで電話がかかってきました。(支払うつもりの無い会社の場合、電話ではなく相手も郵送で反論してくることが多いです)

この企業の勤め先は名古屋でしたが、本社は四国にあり、私は四国の担当者と話をしました。若干、減額にはなりましたが、和解契約書交換の後、1週間以内に支払うということで依頼人も納得して、和解になりました。無事、期間内に入金もあり、スピード解決となりました。

事例-7
さすがに支払いが早い大手企業のケース

40代男性 大手製造業
未払い残業代 約30万円

相談に来られた時は、「上司との関係がうまくいかなくなって辞めた。辞めたからには、今までの残業代を取り戻したい」とのことでした。
実は、このような主張をされる方は、とても多くて、在職期間中はいろいろ文句はあっても我慢していたけれど、辞めることになった以上、もう遠慮はいらないと思われるようです。 会社は、愛知県の人なら知らない人はいないという大手の企業でした。

さすがに大手企業だけあって、証拠は充分でした。タイムカードも給料明細もきちんと全てそろっていました。金額も正確に出すことが出来ました(タイムカードがそろっていない場合は、推定計算をすることになるので、金額も最初は推定になります)。

早い段階で金額が確定しましたので、計算書を添付した催告書を会社に郵送しました。
すると、だいたい5日ほどで、会社の顧問弁護士から回答が来ました。大手企業の場合、顧問弁護士が付いている場合が多いので、残業代の請求をすると、顧問弁護士から回答が来ます。

回答の内容は、「表示された金額を支払いたいので、まずは和解契約書を交わして欲しい」というものです。
裁判をやらずに解決する場合は、お互いに和解契約書を交わしてから金額の支払いが行われるのが普通です。そうしないと、支払った後で、もめることがあるからです。契約書で条件を確認した上で記名押印して、お互いに1通ずつ持ち合います。顧問弁護士が付いている場合は、会社の書式があって、顧問弁護士が送ってくることが多いです。

催告書の金額に対しては減額交渉をしてくる企業が圧倒的に多いのですが、さすがは大手企業というか、証拠が完璧にそろっていることもあるのか、一切の減額交渉はありませんでした。司法書士からの請求というのも関係しているのでしょう。

送られてきた和解契約書を点検して、特に依頼人に不利になる規定が無いかを確認したら、記名押印して、1通返送します(1通は手元に残ります)。後は入金を待つだけです。

未払い残業代の請求で、和解契約書を交わした後に入金されなかったということは今のところありません。(貸金業相手の過払金返還請求だと、たまにあります)。今回の場合も、きっちり振り込まれました。

依頼を受けてから1カ月ちょっとで回収というスピード解決でした。相手が大手企業で証拠がそろっていたこと、金額がそれほど高額ではなかったことなどが早く解決した理由ではないかと思っています。

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